日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
腹腔鏡下胆囊摘出術後に発生した難治性肝性リンパ漏の1例
松本 知拓伊関 丈治京田 有介大場 範行高木 正和渡辺 昌也大端 考佐藤 真輔永井 恵里奈菊山 正隆
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2013 年 46 巻 3 号 p. 189-195

詳細
抄録

 慢性肝炎を合併した胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術後に難治性の腹水貯留を認め,腹水検査の結果肝性リンパ漏と診断し手術的にリンパ漏閉鎖を行いえた症例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,胆石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術後に保存的治療ではコントロールできない難治性の腹水貯留が発生した.腹水検査の結果,肝性リンパ漏と診断し術後5か月目に縫合閉鎖を施行した.肝硬変や慢性肝炎を伴う胆石症に胆囊摘出術を施行した際の合併症の一つに腹水の貯留があるが,通常は保存的治療で軽快する.しかし,極めてまれではあるが難治性の場合があり,リンパ管切離部からの肝性リンパ液の漏出に起因することがあるため,腹水検査で原因を明らかにすることが重要である.肝硬変や慢性肝炎を合併した患者の胆囊摘出術に際しては術後の合併症として肝性リンパ漏を念頭におく必要がある.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top