2013 年 46 巻 9 号 p. 700-707
Desmoplastic small round cell tumor(以下,DSRCTと略記)は若年者に好発する予後不良のまれな疾患である.症例は23歳の女性で,肛門部痛を主訴に前医を受診した.骨盤部CT上,肛門部に50 mm大の腫瘤と両側鼠径部リンパ節腫大を指摘され,加療目的に当院へ紹介された.生検の結果,DSRCTと診断され両側鼠径部リンパ節郭清を含めた腹会陰式直腸切断術を施行した.再発予防のため術後放射線治療を行ったが,6か月目に遠隔転移を来した.全身化学療法はVDC-IE交替療法を18クール,gemcitabine+docetaxelを13クール施行した.長期にわたり腫瘍増殖の抑制をえられていたが再び腫瘍の増大を来し,診断より4年4か月後に死亡した.今回,肛門周囲の発生したDSRCTの1例を経験したため報告する.