2014 年 47 巻 10 号 p. 580-587
消化管原発悪性リンパ腫の多くはB細胞性で,T細胞性は比較的まれである.十二指腸に発生するT細胞性リンパ腫はさらにまれである.症例は82歳男性で,腹痛,嘔気を訴え来院した.CTで十二指腸上行脚に狭窄を認めた.透視下上部消化管内視鏡検査で十二指腸上行脚に全周性に発赤調の不整な結節,潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.内視鏡下生検では確定診断に至らず,診断・治療目的で手術を行った.病変はTreitz靭帯の位置に触知し,十二指腸上行脚から空腸移行部に存在した.術中迅速病理組織学的検査より悪性リンパ腫の診断で,十二指腸部分切除術を施行した.術後病理組織学的検査所見より腸症型T細胞性リンパ腫と診断した.術後にCHOP療法を行ったが,術後約9か月に腸間膜リンパ節再発,小腸穿孔,腹腔内膿瘍が出現し,術後1年で死亡した.十二指腸原発腸症型T細胞性リンパ腫はまれであり報告する.