2015 年 48 巻 2 号 p. 138-144
症例は46歳の女性で,検診の腹部超音波検査で卵巣腫瘍が疑われ,当院紹介となった.造影CTおよび造影MRIでは直腸背側を中心とし,最大径8 cmの内部壊死を伴う腫瘍を認めた.注腸造影および大腸内視鏡検査では直腸の圧排を認めたものの,粘膜面の変化は認めなかった.FDG-PETでは同部位に集積を認めた.以上から,骨盤内の悪性腫瘍を念頭に手術の方針とした,開腹所見では明らかな腹膜播種なく,腫瘍は下部直腸の間膜内に限局して発育していた.腫瘍切除を伴う低位前方切除を行った.病理組織学的に免疫染色検査ではcalretinin,cytokeratin 5/6,D2-40陽性で,CEA,MOC-31陰性であり,悪性腹膜中皮腫(上皮型)と診断された.本症が腹膜外(下部直腸間膜内)に限局性に発生することは極めてまれであり,文献的には本邦において過去に1例報告されたのみである.