2015 年 48 巻 2 号 p. 132-137
症例は67歳の男性で,60歳時に肛門痛を自覚した.前医で仙骨前面に囊胞性腫瘍を指摘された.64歳時に腫瘍の増大を認め,腫瘍の一部を摘出し尾骨囊胞腺腫と診断された.遺残腫瘍が増大し,臀部痛・排便障害が出現したため当院紹介となった.仙骨前面に最大径115 mmの囊胞性腫瘍を認め,CEAが18.6 ng/mlと高値を示した.悪性腫瘍の存在を強く疑い,仙骨合併腹会陰式直腸切断術を施行し腫瘍を完全切除した.病理組織学的検査所見ではmucinous cyst adenocarcinomaと診断され,発生母地となった囊胞性腫瘍はtailgut cystであったと考えられた.術後3年,再発徴候なく生存中である.Tailgut cystは胎生期の遺残物から発生する囊胞性腫瘍であり,悪性腫瘍を伴った報告も散見される.報告例を検討すると,高齢・CEA高値が悪性症例に有意に多く,完全切除例では再発の報告は見られなかった.