日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
急速な進展による腫瘍破裂から腹腔内出血を来した膵体部粘液性囊胞腺癌由来の退形成癌の1例
池庄司 浩臣尾関 豊山本 淳史堀田 亮輔坂下 文夫伊藤 由裕佐治 重豊今井 直基松永 研吾
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2015 年 48 巻 8 号 p. 691-697

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抄録

 症例は61歳の女性で,近医で40 mm大の膵体部囊胞性病変を指摘され,経過観察中に増大したため当院へ紹介された.当院のCTで腫瘤は130 mm大に増大し,Douglas窩に少量の腹腔内出血を伴っていた.膵体部粘液性囊胞腺癌の腫瘍破裂による腹腔内出血と診断し,手術を施行した.開腹するとDouglas窩に少量の血液と腫瘍近傍の腹膜に少数の白色結節を認め,腹膜播種が疑われた.腹腔内出血を制御する目的で,膵体尾部脾合併切除,胃全摘,肝左葉外側区域切除,横行結腸部分切除術を行った.切除標本の病理組織学的診断は卵巣様間質を伴う粘液性囊胞腺癌で,退形成性膵管癌の成分を伴い,腹膜の白色結節は腹膜播種であった.術後は順調に経過し退院したが,肝転移および腹膜播種が急速に進行し,術後3か月で永眠された.膵粘液性囊胞腺癌の破裂例は我が国で2例が報告されているのみであり,本例が3例目であった.

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