2015 年 48 巻 8 号 p. 684-690
症例は62歳の男性で,前医にて直腸癌の同時性肝転移に対し二期的に低位前方切除と肝部分切除が施行された.11か月後に肝S7に4×3 cm大の肝転移再発を認めた.腫瘍条件,肝機能からは切除可能であったが患者が強く粒子線治療を希望し,66 Gy/10回/15日の陽子線治療が行われた.いったん局所制御を得たものの3年後に門脈右枝と短肝静脈に腫瘍栓を伴った形態で同部位に再発を認め当科に紹介された.肝右葉切除+下大静脈楔状切除による根治手術を施行し術後2年間残肝再発は認めていない.近年,粒子線治療は高度先進医療として多くの期待を集めている.情報化社会であり,患者の認知度も高い.本症例を経験し,切除可能大腸癌肝転移にはやはり肝切除が基本であることを再認識した.大腸癌肝転移に対する粒子線治療後のサルベージ手術の報告例は存在せず,大腸癌肝転移の治療方針を考えるうえで興味深い1例と考えられたため報告する.