2015 年 48 巻 8 号 p. 706-714
症例は72歳の女性で,膵頭部膵管内乳頭粘液性腺癌および膵尾部膵管内乳頭粘液性腺腫に対しmiddle-preserving pancreatectomy(以下,MPPと略記)を行った.術前の造影CTでportal annular pancreas(以下,PAPと略記)Type III aの所見を認めたが指摘しえず術中に診断した.糖尿病の既往があり残膵量を多くするため膵頭側断端は2面となった.PAPを伴う症例に対する膵切除の報告はまれでありMPPを施行した報告はない.今回2,000例の造影CTを検証しPAPは2.05%の頻度であった.PAPはその存在が認識されずに手術が行われている可能性が高い.PAPの存在は切除部位や再建法,術後合併症の発生に大きく影響する.安全に手術を施行し術後合併症のリスクを軽減するためには,PAPの存在を知り術前に診断し,切除範囲や再建方法を熟慮することが重要である.