2019 年 52 巻 10 号 p. 590-598
症例は77歳の男性で,過去4年間にわたり内視鏡的止血術を行ってきたが再出血を繰り返す大腸憩室に対して待機的に腹腔鏡下手術を行った.まず,術中内視鏡を施行し内視鏡的止血術時の止血クリップを目印として責任憩室を同定した.次いで,内視鏡でガイドしつつ腹腔鏡下に全層で牽引糸をかけ責任憩室を挙上し自動縫合器を用いて局所切除術を施行した.経過良好にて退院し術後1年経過観察中である.大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドラインでは内視鏡的止血術や血管内治療などに抵抗性の大腸憩室止血困難例に対して出血部位を特定したうえで大腸切除術を施行することが推奨されているが,大腸憩室は良性疾患であるので切除範囲をより少なくし侵襲軽減を図ることが望ましいと考える.本法により手術リスク軽減や腸管大量切除回避などのメリットが得られる可能性がある.過去に同様の報告例はなかった.