2019 年 52 巻 9 号 p. 528-535
症例は82歳の女性で,6年前に上行結腸癌に対し,開腹回盲部切除,D3郭清を施行され,病理結果は,T1b(tub2-tub1)N1M0 pStage IIIaであった.3年前に腹壁瘢痕ヘルニアに対し,腹腔鏡下ヘルニア修復術(メッシュ留置)が施行されたが,腹腔内に明らかな再発所見は認めなかった.今回,癌検診としてのPET-CTで,メッシュ上の腹壁にFDGの異常集積を指摘された.精査にて上行結腸癌の孤立性腹壁再発を疑い,腹壁腫瘍を切除した.病理学的には,メッシュ直上の腹壁脂肪織に境界不明瞭な結節を形成し,間質線維増生を伴って周囲に浸潤増殖する腫瘍細胞を認め,免疫染色検査から腹膜中皮腫と診断した.側方断端は一部で陽性となったが,追加治療はせずに1年6か月無再発生存中である.メッシュ留置による異物反応により,ヘルニア内の腹膜中皮細胞が悪性転化し,浸潤増殖した可能性が示唆された.