日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
緩徐な経過を経て自然壊死を伴った巨大淡明細胞型肝細胞癌の1切除例
吉田 俊彦吉田 佐智子山岸 農山根 秘我松本 拓小林 杏奈藤野 泰宏富永 正寛
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キーワード: 淡明細胞, 肝細胞癌, 肝切除
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2019 年 52 巻 9 号 p. 513-520

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抄録

肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCCと略記)の中には淡明な細胞質を有する淡明細胞型が存在するが,本邦では比較的まれとされている.今回,我々は自然壊死を伴う大型の淡明細胞型HCCを経験した.症例は71歳の女性で,3年前より肝右葉に巨大な囊胞性腫瘤を認めたが,生検で悪性所見が得られなかったため経過観察となっていた.今回フォロー中に腫瘤は増大し周囲に複数の結節影が出現したため再度腫瘍生検を行い,悪性所見を認めたため精査治療目的に紹介となり肝右葉切除術を行った.腫瘍径は10 cm,肉眼型は単純結節周囲増殖型であり,主腫瘍中心部の囊胞性部分は凝固壊死に陥っていた.また,囊胞壁および周囲の複数の結節は大部分が肝細胞由来の淡明細胞癌であった.背景肝に炎症や線維化は認めなかった.大型の淡明細胞型HCCの報告はまれであり,かつ自然経過での凝固壊死を伴っていることも含め示唆に富む症例と考えられた.

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