2019 年 52 巻 9 号 p. 504-512
外傷性膵十二指腸損傷において膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy;以下,PDと略記)が必要となる症例は,重篤な全身状態を呈することが多く,複数回の手術が必要となることも少なくない.症例は39歳の男性で,大型ミキサーにはさまれ,胸腹部に多発外傷を負い当院へ救急搬送された.当初はdamage control surgery(DCS)を行ったが,遅発性に十二指腸壊死・穿孔を生じた.PDを行ったものの,著明な腸管浮腫のため,一期的な消化管再建が施行できず,膵管と胆管は完全外瘻とし,約18週後に消化管再建術を施行した.膵臓および胆管断端は瘢痕組織に覆われ,剥離後の再建による膵液瘻の発生が危惧されたため,外瘻としていたtubeを空腸に内瘻化した.膵液漏の発生なく,自宅退院となったが,頻回の胆道感染や膵外分泌機能不全を生じたため,受傷日から591日目に消化管再々建術を行った.PD後の二期再建の報告は散見されるが,稀有な臨床経過をたどった貴重な症例と考え,ここに報告する.