2019 年 52 巻 9 号 p. 544-550
症例は73歳の女性で,CTで虫垂遠位部に25 mm大の多房性腫瘤を認め,虫垂粘液腫または虫垂癌の診断で手術を行った.手術は腹腔鏡下に行い,虫垂根部に腫瘤および周囲への浸潤所見も認めず,虫垂切除を行った.迅速診断は虫垂粘液腺腫であり,追加切除は行わなかった.永久標本で低異型度虫垂粘液性腫瘍(low-grade appendiceal mucinous neoplasm;以下,LAMNと略記)および杯細胞カルチノイド(goblet cell carcinoid;以下,GCCと略記)の診断を得たため,追加切除の方針とし,腹腔鏡下回盲部切除,D3郭清を施行した.最終病理診断はLAMN(pTis,N0,M0 p-Stage 0)とGCC(pT3,N0,M0 p-Stage IIA)の併存であった.術後補助化学療法は施行せず,術後1年無再発生存中である.虫垂GCCとLAMNとの合併例はまれであるため,報告する.