2020 年 53 巻 3 号 p. 290-298
オペレコとは,皮膚の下に広がる膨大な解剖構造を,外科医がいかに解体・再構築したかを描いた個人情報であり,スケッチが持つ正確性とシェーマが持つ単純性を併せ持った図譜(イラスト)であることが望ましいと考える.また,オペレコを繰り返し描くことで,反復する手術イメージによって経験値が増幅され,知識が整理されてインプット精度の向上に繋がるため,若手外科医の手術手技上達を加速させる最良の手段といえる.著者は,症例ごとに変化する手術内容の「相違点」を抽出することと,実際の現場でのみ体験的習得が可能な「見聞録」を図譜に落とし込むことを意識してオペレコを描いている.今回,医師9年目に執刀した64歳男性の食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術症例のオペレコを提示する.