2020 年 53 巻 3 号 p. 282-289
手術記事では短時間に手術内容を理解できることが望ましい.そのためには手術イラストが重要な役割を担う.手術イラストは複数の異なる手技・術中経過を一つの絵の中に盛り込むことで「手術の流れ」を表現することができ,術中写真を張り付けた手術記事に比べて情報量に優れる.筆者は手術を「術前解剖」「切離ラインの設定」「標本摘出時」「手術終了時」の4段階に分け,それぞれに対応した手術イラストを作成することを基本としている.近年は高精細タッチスクリーンを備えたタブレット型コンピューターを用いることで,従来の手描きと遜色のないデジタル描画が可能である.手描きの手術イラスト作成に必要な鉛筆や紙,これらを広げるスペースが不要となり,時と場所を選ばず手術イラストが作成できる.また,レイヤー機能を活用するとイラストの修正が容易で,上手な絵を「下絵」として指導医-研修医間で共有することができ,外科教育面における寄与も大きい.