2021 年 54 巻 5 号 p. 344-350
症例は70歳の男性で,右季肋部痛のため近医を受診し,腹部エコー検査で胆囊炎の診断であった.症状軽快傾向であったため,後日治療目的に当院に紹介された.腹部造影CTを施行したところ,小腸間膜根部に約4 cm大の腫瘤影を認め,上腸間膜動脈,下腸間膜静脈に近接していた.腫瘤は脂肪濃度主体であり,一部軟部組織濃度であったため,奇形腫や脂肪肉腫が疑われた.胆囊摘出と同時に腸間膜腫瘍を摘出する方針とした.腸間膜腫瘍は悪性の可能性もあったため,周囲組織とともに摘出した.摘出後,腫瘍を切開すると内部に毛髪を認め,術後病理学的検査にて,成熟囊胞性奇形腫の診断であった.経過は良好であり,術後8日目に退院した.腸間膜由来の成熟囊胞性奇形腫は比較的まれな症例のため,報告する.