2021 年 54 巻 5 号 p. 351-358
症例は60歳の女性で,52歳時に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;以下,UCと略記)(左側大腸炎型)と診断された.59歳時に施行したサーベイランス目的の下部消化管内視鏡検査にて肛門管に隆起性病変を認め,生検にて扁平上皮癌と診断された.肛門管扁平上皮癌に対する治療の第一選択は化学放射線療法であるが,直腸肛門部粘膜の炎症増悪が懸念されたため手術の方針となった.腹腔鏡下大腸全摘術(内肛門括約筋合併切除を伴う),回腸囊肛門吻合術,回腸瘻造設術を施行した.病理組織診断にてpT2N1bM0,Stage IIIAであったため,術後補助化学療法としてFOLFOXを12クール施行し,術後8か月現在まで無再発生存中である.UCに合併した肛門管扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.