抄録
昭和50年1月より昭和60年12月までの11年間に手術した胃癌は723例である. そのうち70歳以上の高齢者141例につき, 胃癌手術における侵襲範囲と合併症につき検討した. 併存疾患を有しているものが多く, 70~74歳では49.0%, 75歳以上では69.2%と高率であった. 術後合併症はR2以上のリンパ節郭清を行った症例であり, 70~74歳では肺合併症, 敗血症が多く, 75歳以上では縫合不全, 急性腎不全が多かった. 手術直接死亡は, 70~74歳で4.9%, 75歳以上で7.7%と高率であった. 高齢者胃癌に対しては, 原則的にR2郭清を行っているが, 70歳代では積極的広範切除, 合併切除などの拡大根治術が必要である. しかし, 75歳以上では術前併存症, 手術直接死亡も多いことより, 慎重に対処すべきである.