本論文の目的は, 70歳以上の消化性潰瘍穿孔例を詳細に分析し, その臨床的特徴を明らかにすることにある.対象は1966年から1990年までに, 順天堂大学で手術が施行された消化性潰瘍穿孔192例で, うち70歳以上の高齢者は20例であった.方法は全例を年代別, 年齢別に検討し70歳以上の症例については, 患者背景, 術前併存疾患, 臨床所見, 治療, 病理学的所見および死亡例について検討した.最近の10年間で70歳以上の症例は有意に増加し, 穿孔症例の年代別平均年齢は年々高くなっている.70歳以上の穿孔例20例のうち十二指腸潰瘍は16例と多くを占めていた.潰瘍の既往歴の無い例は14例で, 術前併存疾患合併率は85%であった.病理学的には急性潰瘍型が11例であった. 手術は単純閉鎖術が2例のみで他は根治手術が行われ, 手術死亡は4例であった.高齢老の穿孔例は, 既往歴の無い例が多く, 病状が刻々変化するので, 画像診断を駆使して早期に診断すべきである.