日本消化器外科学会雑誌
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tageIV肝細胞癌に対する肝切除術の意義
岩本 伸一佐々木 洋今岡 真義桝谷 誠三大橋 一朗石川 治古河 洋亀山 雅男甲 利幸小山 博記岩永 剛
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1992 年 25 巻 8 号 p. 2118-2122

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抄録

1990年12月31日末までの当センターにおける肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma; HCC) に対する肝切除術施行例は291例でそのうちStage IV症例は38例であった.これら38例についてその予後からみた肝切除術の適応と意義について考察した.StageIV全症例の5年生存率は19%で, StageI, II, IIIに比べ有意に不良であった.しかしながら相対非治癒 (relative noncurative, RN) 切除症例17例の5年生存率は40%と他Stageの絶対非治癒 (absolute noncurative, AN) 切除を除いた症例の5生率と有意差はなかった.これらの症例はStageIVの絶対非治癒 (AN) 切除例に比べ腫瘍因子において有意に良好であった.特に腫瘍数が2個で多中心性発癌の可能性が考えられた症例に対する切除成績は極めて良好であった, これよりStage IV症例であってもRNの手術可能な場合は施行すべきであると考えられた.一方, AN症例については2年以上生存例はなく手術適応になるとはいい難いが, 手術後にtranscatheter arterial embolization (TAE) を主体とした集学的治療を施行することを前提とした補助的外科療法としての意義を見いだしうる可能性が考えられた.

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