日本消化器外科学会雑誌
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肝細胞癌・消化管癌重複例の診断および治療上の問題点
志岐 裕源具 英成大柳 治正斎藤 洋一
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1992 年 25 巻 8 号 p. 2123-2128

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抄録

肝細胞癌・消化管癌を重複した11例の診断・治療上の問題点を検討した.同時性は5例, 異時性は6例であった.肝細胞癌の診断先行3例では消化管癌は内視鏡検査で偶然発見された.消化管癌の診断先行8例では肝転移検索のcomputed tomographyで腫瘍病変の存在 (4例, 50%), および血清α-fetoprotein (AFP) 高値 (4例, 50%) が肝細胞癌診断の主な契機であった.また血清carcinoem.bryonic antigen (CEA) は3例で軽度上昇を認めたが他は陰性で肝細胞癌の併存を疑う上でAFP高値とともにCEA低値は重要と考えられた.治療として肝切除は6例に施行され, 2例が肝不全で死亡したが他は耐術した.同時性3例で肝胃同時切除を施行したが, 1例は腹水, 低蛋白血症が持続し, 縫合不全, 肝不全を併発し1か月後死亡した.以上より肝重複癌の外科的治療に際しては肝機能上の安全域をより重視した術式選択を行い縫合不全や通過障害をきたさぬ確実な再建が重要と考えられた.

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