日本消化器外科学会雑誌
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胆嚢内胆汁の粘度特性に関する臨床的実験的研究
絶食による変化について
斉田 芳久
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1992 年 25 巻 8 号 p. 2129-2138

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抄録

術後急性無石胆嚢炎の成因としては, 胆汁の濃縮粘稠化が重要といわれている.そこで各種条件下における胆汁粘度の直接的測定, 分析を試みた.臨床例からは正常胆嚢内胆汁の粘度特性を測定した.またイヌにて絶食による胆嚢内胆汁の粘度変化を, 無処置絶食, 胆嚢収縮, 幹迷走神経切離 (迷切) の各条件下にてレオロジー的手法を用いて解析した.ヒト正常胆嚢内胆汁の粘度は, 非ニュートン粘性係数2.63±0.68, 粘性指数0.98±0.01で, 構造粘性を示した.イヌでは, 絶食により粘度は有意に上昇し, その傾向は迷切, 無処置, 胆嚢収縮の順に強かった.しかし, 胆汁のレオロジー的特性から, 生理的なずり速度のかかる状況では, 絶食による影響は少なくなり, また迷切による胆汁粘度上昇は, 有意な差でなくなった.以上から胆汁は生理的に, 濃縮だけでは排出障害を引き起こさず, 術後急性無石胆嚢炎の発生には, 絶食および迷切以外の因子の関与が存在することが示唆された.

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