日本消化器外科学会雑誌
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膵管閉塞の膵ライソゾームへの影響とその抑制物質の作用効果に関する実験的研究
平野 鉄也真辺 忠夫戸部 隆吉
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1992 年 25 巻 8 号 p. 2145-2151

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抄録

膵管結紮家兎にて膵腺房細胞の変化と新しい蛋白分解酵素阻害剤E3123の保護効果を検討した.3時間の短期間膵管閉塞とsecretin (0.2CU/kg・hr) 投与にて, 門脈血中amylase (46±4U/ml) (p<0.01), cathepsin B値 (9.6±0.7U/ml) (p<0.01), 膵水分量 (87±2%) (p<0.05), 膵amylase量 (614±42U/mg DNA) (p<0, 02) およびin-vitroでの膵ライソゾームの脆弱性はコントロール群 (amylase;15±2U/ml, cathepsin B;1.8±0.2U/ml, 膵水分量;74±2, 膵amylase量;387±23U/mg DNA) に比べ有意に上昇・亢進を示し, 膵腺房細胞内にてもcathepsin B活性がライソゾーム分画 (30±3%) より, チモーゲン分画 (49±4%) に移動するのが観察された (コントロール群: ライソゾーム分画;55±3%, チモーゲン分画;23±2%).これらの変化はE3123を5mg/kg・hrにて, 膵管閉塞時に投与することにより, ほぼ完全に阻止され, 2mg/kg・hrにても高アミラーゼ血症やcathepsin B活性の移動に対して抑制効果が示された.以上の結果は膵管閉塞障害における膵腺房内ライソゾームの脆弱化にE3123が抑制効果を発揮することを示唆させるものであった.

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