1992 年 25 巻 8 号 p. 2162-2165
患者は53歳男性で, 胃X線検査にて前庭部前壁に径4.5×3.0cmの表面平滑な隆起性病変を認めた.胃超音波内視鏡検査にて腫瘍は粘膜下層を主座とする境界明瞭な多嚢胞性疾患であり, 内容物は液体のエコーレベルを呈し, また, 内視鏡下に内容物の穿刺吸引細胞診を行い, 多数のリンパ球を確認した.以上より, 胃リンパ管腫と診断し当初外科的切除を考えたが, 基本的に良性でありかつ粘膜下に限局することより, 内視鏡的strip biopsyにて切除可能と考え, 平成2年5月1日切除を施行した.組織学的には嚢状リンパ管腫と診断され, 切除後1年半の経過にて再発は確認されていない, これまで, 胃リンパ管腫の多くは胃嚢胞の診断のもとに外科的切除されることが多かったが, 胃超音波内視鏡検査および穿刺吸引細胞診にてその質的診断, 局在の同定は可能であり, 過大な外科的侵襲を加えることなく, 内視鏡的strip biopsyにて治癒可能であると考えられた.