症例は63歳の女性で, 4年前に右腎細胞癌で右腎摘出を, 2年前左肩皮膚転移巣の切除を受けた.以後当院泌尿器科で経過を観察していたが, 腹部超音波検査で膵臓に境界明瞭で低エコーレベルの充実性腫瘍を多発性に認めた.またcomputed tomography検査でも, 造影剤で濃染する腫瘍像を認めた.endoscopic retrograde pancreatographyでは主膵管の圧排伸展や尾部での完全閉塞を, 腹腔動脈造影検査では境界明瞭なび漫性濃染像を多発性に認めた.以上より, 腎細胞癌膵転移もしくは原発性膵腫瘍と診断し, 膵全摘術を施行した.切除標本では, 膵全体に多発性の境界明瞭な腫瘍を認めた.組織学的には, 4年前に切除した腎細胞癌に一致した混合亜型で, 腎細胞癌の膵転移と判明した.