結腸癌の穿孔により後腹膜膿瘍をきたした3症例を経験したので報告する.
症例1は54歳女性, 症例2は70歳女性.症例3は28歳男性であった.症例1は子宮頸癌手術後, 上行結腸後壁へ転移をきたし後腹膜腔へ穿孔した.穿孔部の病理組織像では扁平上皮癌が結腸壁全層および後腹膜腔側に連続性に浸潤していた, 他の2例はおのおの, 上行結腸, 盲腸の原発癌で癌病巣部の潰瘍底に後腹膜腔への穿孔を認めた.膿瘍腔のドレナージとともに症例1と2に右半結腸切除術, 症例3に回盲部切除術を施行した.3症例とも後腹膜腔内穿孔後, 確定診断に至るまで日数を要した.症例1と2では入院後, 腰部に大きな圧痛を伴う皮下の腫脹がみられた.
画像診断のなかでcomputed tomography (CT) は後腹膜腔の解像力に優れ, この領域の病変を検索するのに有用であった.後腹膜膿瘍を伴う結腸癌では膿瘍腔のドレナージとともに可能な限りすべての癌病巣部を癌腫から十分離れた健常部位で切除するように心がけなければならない.