1993 年 26 巻 10 号 p. 2444-2448
今回, 我々は十二指腸のgangliocytic paragangliomaで, 膵頭部前面リンパ節に転移がみられた症例を経験した.症例は63歳の女性で主訴は上腹部痛であった.腹部超音波検査で総胆管拡張を認め, さらに内視鏡, 低緊張性十二指腸造影で十二指腸に腫瘍を発見した, この腫瘍は表面に多数の潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の所見を呈した.全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.腫瘍の組織像およびNSE, S-100 protein, somatostatinなどの免疫組織化学的検索によりgangliocytic paragangliomaと診断した.さらに膵周囲のリンパ節にも小さな転移巣を認めた.これまでにgangliocytic paragangliomaのリンパ節転移例は6例報告されているが, 再発の報告はなく予後は良好であった.本腫瘍に対しては拡大手術は必要でないと考えられた.