1993 年 26 巻 10 号 p. 2478-2482
Windsock型十二指腸膜様狭窄 (以下本症) はまれな先天奇形で, 成人例は極めて少なく, 全周性管腔内十二指腸憩室と報告されている5例を含め11例の本邦報告例がみられるにすぎない.
輪状膵, 腸回転異常を伴った本症の1成人例を経験した.患者は47歳の女性.数年来の心窩部痛, 上腹部膨満感を主訴に入院した.消化管X線検査にて, 十二指腸球後部狭窄, 下行脚に西洋梨状嚢状陰影と周囲透明帯, 胃潰瘍, 腸回転異常を認めた.内視鏡検査では, 十二指腸下行脚に全周性の膜様物を認め, 一部に肛側に通じる小孔を認めた.
本症の診断のもと, 開腹手術を施行した.十二指腸ループは形成されておらず, 下行脚上部に輪状膵を認め, 十二指腸切開による検索で, 輪状膵部に狭窄, その肛側にwindsock型十二指腸膜様狭窄 (径6mmの偏心性小孔) を認めたが, 十二指腸乳頭は確認できなかった.広範囲胃切除術, Billroth II法による再建, 十二指腸十二指腸吻合を施行した.術後経過は良好であり, 術後23日目に退院した.