1994 年 27 巻 9 号 p. 2141-2145
症例は胆嚢摘出術の既往を有する65歳の男性.肝膿瘍を繰り返すため胆道疾患の合併を疑い入院した.精査の結果, 総胆管結石症の他に早期胃癌を偶然発見し, 総胆管切開, 切石術と胃亜全摘術を施行した.その際尾状葉の肉眼所見, 術中胆道造影および超音波検査により尾状葉に限局する原発性肝内結石症を発見したため尾状葉切除術も追加した.結石成分は肝内・総胆管内ともコレステロール100%であった.尾状葉に限局する肝内結石症はまれな疾患であり, 術前診断は困難であったが, 尾状葉胆管の拡張と結石充満を反映する索状低吸収域を術前のCT像上看過していたことが判明した.一方, 術中超音波検査は簡便で結石の描出能に優れ, 部位診断にも有用であるため, 肝内病変の疑われる症例には励行されるべきである.