日本消化器外科学会雑誌
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尿膜管遺残組織の感染に起因したと考えられる大網内膿瘍の1例
田中 千弘横尾 直樹浦 克明秦 浩一郎加藤 達史福井 貴巳東 久弥白子 隆志山口 哲哉岡本 清尚
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2000 年 33 巻 1 号 p. 98-101

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抄録
尿膜管遺残組織の感染に起因したと考えられる, 大網内膿瘍を経験したので報告する. 症例は18歳の男性. 主訴は腹痛と発熱. 腹部超音波検査およびCT検査にて, 正中線上で臍下4cmから下方に約6cm大の, 腹壁に密接する嚢胞性腫瘤を認めた. 化膿性尿膜管嚢胞を疑い, 腫瘤摘出術を施行した. 腹直筋と腹膜の間に癒着を認め, さらに, 尿膜管遺残組織と思われる索状物を確認した. 腫瘤は腹腔内に存在し, 大網内に進展する膿瘍であった. 腫瘤壁は, 腹膜と癒着し接している以外には, 腹腔内臓器との間に交通を認めず, 尿膜管遺残組織の感染に起因した大網内膿瘍が最も疑われた. 病理組織学的検索でも, 尿膜管の遺残組織に感染を伴ったものとして矛盾しない所見を認めた. 尿膜管遺残組織が化膿性嚢胞として, 前腹壁や腹腔内に突破した報告例は, まれに認められる.しかし, 本症例のような大網内限局性膿瘍形成はこれまでに報告がない.
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