2000 年 33 巻 11 号 p. 1859-1863
気管浸潤陽性の食道癌に対し, 広範囲気管合併切除を伴う喉頭食道全摘術, 後縦隔経路胃管再建術を施行したのち, 大網を用いて縦隔気管孔を造設した1例を経験した. 症例: 58歳の男性. 手術術式: 右第5肋間開胸にて, 胸腔内リンパ節郭清と胸部食道の遊離を行った後, 背臥位とし, 前頸部のU字皮膚切開と連続する第3肋間までの正中切開を行った. 広範囲に前胸部上部の骨性胸壁を除去し, 咽喉頭, 気管, 食道とともに腫瘍を一塊として摘出した. 腹部正中切開にて開腹し, 前大網が付属した胃管を作成して, 後縦隔経路で, 咽頭胃管吻合を行った. 大網にて気管周囲と露出した血管, 吻合部を被覆した. 皮膚は単純閉鎖し, 気管孔は正中皮膚切開部に作成した.
この術式は簡便で, 術後の外観の変形も少なく, 優れた縦隔気管孔の再建方法の一つと考えられた.