症例は23歳の女性. 平成13年7月4日より腹痛嘔吐が出現し7月7日当院を受診した. 触診上, 左下腹部に圧痛を伴った鶏卵大腫瘤を触知した. 腹部エコー, CT検査において左下腹部にターゲットサインを認め, また上部小腸の拡張を認めた. 小腸重積症の診断で高圧注腸を試みたが, 整復が困難であったため緊急手術を行った. 回腸末端部より90cm口側の回腸が約15cmにわたって重積を起こしており, 約40cmの回腸を切除した. 重積回腸先進部の粘膜面に径約3cmの腫瘍を認めた. 病理組織学的には, 粘膜下組織と筋層内に平滑筋組織と混在する導管構造を認め, 迷入膵Heinrich分類III型と診断した. 迷入膵は胃, 十二指腸, 空腸などの膵の近傍に好発する疾患で, 回腸に発生することは比較的まれである. 回腸迷入膵は腸重積を引き起こし発症することが多く, 高圧注腸による整復が困難で腸切除を余儀なくされることが多い. 発生部位は回腸末端部より100cmまでの下部回腸に好発する.