日本消化器外科学会雑誌
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化学療法中, 反復性出血を来した多発性脾嚢胞の1例
山中 秀高西垣 英治堀 昭彦杉浦 友則河合 徹川井 覚平松 聖史北川 喜己河野 弘松浦 豊
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2002 年 35 巻 2 号 p. 171-175

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抄録
脾嚢胞に遭遇することは画像診断の進歩に伴いまれではない. 今回, 我々は肺癌の化学療法が原因と思われる, 反復性出血を来した多発性脾嚢胞の1例を報告する. 症例は58歳の男性. 右肺癌, 癌性胸膜炎で化学療法施行中, 左上側背部痛が出現した. 血液検査で貧血を, 腹部超音波およびCT検査で多発性脾嚢胞を認め, その1つは出血していた. いずれの嚢胞も腫瘍性病変はなかった. 保存的治療でいったん軽快したが, 発症後14日目に再発し, 腹部CT検査で前回と異なる嚢胞に出血を認めた. 反復性出血性多発性脾嚢胞と診断し手術を施行した. 脾は膵, 大網, 腹壁, 横隔膜と線維性結合織で強固に癒着しており, これらを部分切除して脾摘出術を施行した. 切除標本で径5cmまでの4個の嚢胞を認めた. すべての嚢胞は単房性で, 内容液は古い血液であった. 病理組織で嚢胞壁は内腔に被覆細胞のない線維性結合織で, 仮性嚢胞であった. 各嚢胞は新旧さまざまな段階の出血巣を認めた.
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