2008 年 41 巻 5 号 p. 487-492
症例は63歳の男性で, 2002年7月にMtUtLt T3-4, N2, cStageIIIの高分化型扁平上皮癌 (以下, SCC) を指摘された. 気管支浸潤も疑われ, 根治的放射線化学療法を施行された. 2002年12月, 腫瘍はCR, リンパ節はPRの評価であった. 2003年9月, 門歯より40~45cmに全周性の粘膜不整像, ルゴール不染があり, 食道癌と診断された. 別照射野にて再度放射線化学療法50Gyを施行されたがNCであり, 2004年に内視鏡的粘膜下層切除術を追加施行された.m1, ly0, v0のSCCであった. さらに, 2004年8月, 下咽頭癌 (SCC, T1 N0 M0) の診断にて下咽頭部分切除術を施行された. 2006年1月, 胃噴門部に径2cmの粘膜下腫瘍様隆起が出現した. 超音波内視鏡下針生検にてSCCと診断され2006年4月噴門側胃切除術を施行した. 病理組織学的検査所見は中分化型SCCであり高度の静脈侵襲を伴い, 最初に診断された食道癌の血行性転移の可能性が示唆された.