症例は35歳の男性で, 平成17年10月, 嚥下時の前胸部違和感と飲酒後の吐血を主訴に近医を受診. 上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に約4cmの腫瘍を指摘され, 生検にて腺癌と診断された. 同年11月に当科紹介となり, 12月右開胸開腹食道亜全摘, 3領域リンパ節郭清, 後縦隔経路胃管再建術を施行した. 病理組織学的検査にて異所性胃粘膜と腺癌組織の連続性を認め, 異所性胃粘膜から発生した食道腺癌と診断した. 深達度はsm3で, 頸部・上縦隔リンパ節に計3個の転移を認めた. 食道の異所性胃粘膜は頸部食道に好発し, 内視鏡検査時にしばしば見られるが癌化の報告はまれである. しかし, 検査時には他の部位と同様に注意深い観察が必要である.