日本消化器外科学会雑誌
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41 巻, 5 号
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  • Miles手術と仙骨腹式手術の比較
    石上 俊一, 北口 和彦, 崎久保 守人, 上村 良, 浦 克明, 大江 秀明, 吉川 明, 田村 淳, 馬場 信雄, 坂梨 四郎
    2008 年41 巻5 号 p. 475-480
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 直腸切断術には, 従来の腹会陰式 (Miles手術) 以外に, 体位変換を伴う仙骨腹式, 腹仙骨式, 腹仙骨腹式などの術式がある. 腹会陰式では, 術中の体位変換が不要だが, 前立腺背側や膣後壁の止血に難渋する場合がある. 今回, 体位変換を伴う直腸切断術式の有用性につき検討した. 方法: 当院で1988年4月から2007年3月までの19年間に, 直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術を施行された70例と, 仙骨腹式直腸切断術を施行された64例を対象として, 両者における手術時間と術中出血量を比較した. 結果: 手術時間は, 腹会陰式365.6±10.5分, 仙骨腹式315.1±8.6分と, 腹会陰式に比べ, 体位変換が必要な仙骨腹式で有意に短かかった (p=0.0004). ただ, 側方郭清は両群とも約半数の症例で施行されており, 側方郭清症例の多寡が手術時間に影響しているわけではなかった. 術中出血量は, 腹会陰式1,338.0±164.1ml, 仙骨腹式790.9±69.4mlで, 腹会陰式に比べ仙骨腹式で有意に少なかった (p=0.0035). 考察: 直腸切断術での体位変換は, 出血量減少や手術時間短縮を図るうえで有用であった. 今後, 症例を選別して, 積極的にこれら体位変換術式を導入していくとともに, 後進の外科医に教育・伝達していきたいと考える.
  • 境 雄大, 佐藤 浩一, 今 昭人, 須藤 泰裕
    2008 年41 巻5 号 p. 481-486
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチでメトトレキセートを内服中の71歳の女性が, 昼食後に入浴し, 立ち上がった際に意識を消失して転倒した. 意識は回復したが, 強い胸痛と呼吸苦が出現したため, 当院へ搬入された. 胸部CTで左気胸, 左胸腔内の食物残渣状の胸水貯留, 胸部下部食道壁の肥厚を認めたが, 外傷性変化は見られなかった. 胸腔ドレナージ後に内視鏡検査で胸部下部食道に穿孔を確認し, 緊急手術を行った. 開胸すると食物残渣を混じた胸水が貯留しており, 胸部下部食道左側壁に3.5cmの穿孔を認めた. 1期的縫合閉鎖, 洗浄, ドレナージを行った. 術後食道造影X線検査では縫合不全や狭窄はなく, 食事摂取も良好であった. 創感染と日常生活動作の低下により入院が長期化したが, 術後58日目に退院した. 自験例では意識消失・転倒に先行した腹腔内圧上昇につながる症状はなく, 食道破裂の成因は転倒による圧上昇と推測された.鈍的外傷では食道破裂も念頭におく必要がある.
  • 丹羽 隆善, 野村 幸世, 山田 和彦, 神保 敬一, 岡本 真, 宇於崎 宏, 上西 紀夫
    2008 年41 巻5 号 p. 487-492
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で, 2002年7月にMtUtLt T3-4, N2, cStageIIIの高分化型扁平上皮癌 (以下, SCC) を指摘された. 気管支浸潤も疑われ, 根治的放射線化学療法を施行された. 2002年12月, 腫瘍はCR, リンパ節はPRの評価であった. 2003年9月, 門歯より40~45cmに全周性の粘膜不整像, ルゴール不染があり, 食道癌と診断された. 別照射野にて再度放射線化学療法50Gyを施行されたがNCであり, 2004年に内視鏡的粘膜下層切除術を追加施行された.m1, ly0, v0のSCCであった. さらに, 2004年8月, 下咽頭癌 (SCC, T1 N0 M0) の診断にて下咽頭部分切除術を施行された. 2006年1月, 胃噴門部に径2cmの粘膜下腫瘍様隆起が出現した. 超音波内視鏡下針生検にてSCCと診断され2006年4月噴門側胃切除術を施行した. 病理組織学的検査所見は中分化型SCCであり高度の静脈侵襲を伴い, 最初に診断された食道癌の血行性転移の可能性が示唆された.
  • 春木 茂男, 河野 辰幸, 永井 鑑, 西蔭 徹郎, 中島 康晃, 川田 研郎, 荻谷 一男, 田中 浩司, 河内 洋
    2008 年41 巻5 号 p. 493-498
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の男性で, 平成17年10月, 嚥下時の前胸部違和感と飲酒後の吐血を主訴に近医を受診. 上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に約4cmの腫瘍を指摘され, 生検にて腺癌と診断された. 同年11月に当科紹介となり, 12月右開胸開腹食道亜全摘, 3領域リンパ節郭清, 後縦隔経路胃管再建術を施行した. 病理組織学的検査にて異所性胃粘膜と腺癌組織の連続性を認め, 異所性胃粘膜から発生した食道腺癌と診断した. 深達度はsm3で, 頸部・上縦隔リンパ節に計3個の転移を認めた. 食道の異所性胃粘膜は頸部食道に好発し, 内視鏡検査時にしばしば見られるが癌化の報告はまれである. しかし, 検査時には他の部位と同様に注意深い観察が必要である.
  • 御供 真吾, 岩谷 岳, 池田 健一郎, 木村 祐輔, 肥田 圭介, 藤原 久貴, 木村 聡元, 上杉 憲幸, 前沢 千早, 若林 剛
    2008 年41 巻5 号 p. 499-504
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性で, 嚥下障害を主訴に近医を受診した. 胸部下部食道に潰瘍性病変を認め, 生検にて腺癌の診断で胸部食道切除, 3領域リンパ節郭清, 後縦隔経路大彎側胃管再建を施行した. 病理組織学的診断は低分化型腺癌で, いわゆるmedullary carcinoma with lymphoid stromaの像を呈していた. 乳癌や胃癌におけるリンパ球浸潤を伴った癌は一般に予後良好とされており, 胃癌ではEB virusの発癌への関与も指摘されている. しかし, 同型の食道癌は報告例が少なく不明な点が多い. In situ hybridizationではEpstein-Barr virus (EBV) 感染を示すEBERは陰性であった. また, 免疫染色ではHLA-DR抗原が癌細胞に陽性に染色された. リンパ球浸潤を伴う食道癌におけるHLA-DR抗原の発現が, 長期生存と関係している可能性が示唆され, 文献的考察を加え報告する.
  • 村田 年弘, 上塚 大一, 宇田 征史, 川真田 修, 中井 肇, 太田 保
    2008 年41 巻5 号 p. 505-509
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で, 腹痛を主訴に受診した. 来院時, 上腹部を中心に筋性防御を認め, 板状硬であった. 血液検査では炎症反応の上昇と, 肝機能・腎機能障害およびCKの上昇を認めた. CTでは胃壁の浮腫による著明な肥厚と少量の腹水を認め, 上腹部腸管を原因とする腹膜炎の診断にて審査腹腔鏡を行った. 血性の腹水および胃の虚血性変化を認めたため, 術中胃内視鏡検査を施行した. 胃体中部から前庭部にかけ粘膜の脱落と潰瘍性病変および暗赤色性の変化を認め, 胃壊死と診断, 開腹に移行し胃全摘術を行った. 病理組織学的診断では潰瘍部に中分化腺癌を認め, 深達度はmpであった. また, 膿瘍を形成する好中球浸潤を全層に認め, 一部菌塊を伴っていた. 全層性の壊死を伴っている部位も認めた. 胃壊死の原因としては, 癌の潰瘍部からの感染が考えられた. まれな症例と考えられたので, 文献的考察を加え報告する.
  • 塚本 好彦, 佐溝 政広, 高橋 徹也, 宮下 勝, 前川 貴代
    2008 年41 巻5 号 p. 510-515
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性で. 上腹部膨満感で来院. 内視鏡および胃透視検査でcushion signを呈する十二指腸球部から胃前庭部にかけて巨大な粘膜下腫瘍が存在した. CTでは十二指腸球部に径67×66mmの脂肪濃度を呈する境界明瞭な腫瘍を認めた. 脂肪腫と診断し. 腹腔鏡補助下胃幽門側切除術を施行した. 切除標本では十二指腸球部から幽門輪を超え胃に進入する12×6.5×3.0cmの広基性巨大粘膜下腫瘍であった. 病理組織学的検査では粘膜下に発生した脂肪腫と診断した. 50mmを超える十二指腸巨大脂肪腫の報告は過去に本邦では5例. 外国では9例の報告があるのみで幽門輪をまたいで胃にかかるものの報告はない. また. 腹腔鏡補助下に切除したものの報告も過去に2例のみである. 今回. 腹腔鏡手術が有効であった十二指腸巨大脂肪腫の1例を経験したので報告する.
  • 石崎 哲央, 高木 眞人, 尾形 高士, 安田 祥浩, 伊藤 一成, 園田 一郎, 鈴木 芳明, 寿美 哲生, 青木 達哉, 島津 元秀
    2008 年41 巻5 号 p. 516-520
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性で, 心窩部不快感のため近医にて上部消化管内視鏡検査を施行した. 十二指腸第4部に隆起性病変を認めたため当院を紹介された. 画像検査所見で遠隔転移やリンパ節腫大などは認めなかった. 腫瘍マーカーは正常だった. 生検結果はadenoma with moderate tosevere atypiaであったが, 長径40mmと大きく腺腫内癌を否定しえず, 手術を施行した. 術中リンパ節を迅速病理組織学的診断に提出して転移のないことを確認し十二指腸部分切除術を施行した. 病理組織学的診断は40×30mm, very well differentiated adenocarcinoma, T1 N0 M0stage Iであった. 原発性十二指腸第4部早期癌の報告は極めてまれであり, 文献的考察を加え報告した.
  • 関 崇, 河野 弘, 三輪 知弘, 佐竹 立成
    2008 年41 巻5 号 p. 521-526
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の女性で, 腹痛を主訴に当院を受診した. 腹部CTで肝下面に直径約4cmの造影効果を示す腫瘍性病変および腹腔内全体に腹水貯留像を認めたため, 肝腫瘍破裂による腹腔内出血と診断し緊急開腹手術を施行した. 血性腹水を約1,500ml認めたがすでに止血されていた.また, 肝S6からぶら下がるように4.0×3.5×3.0cmの被膜に覆われた腫瘍を認めたが破裂しておらず, 腹腔内検索にて出血源として卵巣出血が疑われた. 腫瘍を含めた肝部分切除術を施行した. 病理組織学的検査にて孤立性線維性腫瘍 (solitary fibrous tumor; 以下, SFT) と診断された. 術後3か月で多発肝転移, 多発骨転移を来し術後11か月で原病死した. 肝臓原発のSFTは報告例26例と極めてまれである. また, SFTは良性のことが多いが, 自験例は悪性の転帰をたどったことでも貴重な症例と思われるので文献的考察を加え報告する.
  • 白潟 義晴, 佐々木 直也, 篠原 尚, 糸井 和美, 福山 学, 西川 秀文, 水野 惠文, 三村 六郎
    2008 年41 巻5 号 p. 527-532
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性で, 右季肋部痛にて近医受診し肝胆道系酵素の上昇と胆嚢の腫大, 上部胆管の拡張を指摘され当科入院となった. 腹部造影CTにて胆嚢の腫大, 肝内肝外胆管の拡張を認めたが明らかな腫瘤像を指摘できず, MRCPにて胆嚢の腫大, 上部胆管の拡張と下部胆管でのV字型狭窄を認めた. 経皮経肝胆嚢ドレナージを施行した際の直接胆道造影でも下部胆管は造影されなかったため, 下部胆管癌の可能性が高いと判断し手術を施行した. 中下部胆管に3cm大の腫瘤を認め胆管周囲に著明なリンパ節の腫脹を認めた. 腫瘤は門脈と一部強固に癒着しており剥離不可能のため門脈壁を一部楔状に切除し亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した. 病理組織学的診断は慢性胆管炎に伴う胆管潰瘍で悪性所見を認めなかった. 術後経過は良好であった. 慢性胆管炎に伴う胆管潰瘍の報告はなく本症例は極めてまれと考えられた. 文献的考察を加え報告した.
  • 矢川 陽介, 安田 秀喜, 杉本 真樹, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 樋口 亮太, 済陽 義久
    2008 年41 巻5 号 p. 533-539
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆管閉塞を来した好酸球性胆管炎の2症例を経験した. 症例1は53歳の女性で, 検診にて肝異常陰影を指摘された. CT, ERCPで肝左葉の肝内胆管閉塞を認めた. 胆汁細胞診は良性であったが胆管癌も否定できず肝左葉切除術を施行した. 病理組織学的には胆管閉塞部位に多数の好酸球浸潤を認めた. 術後18か月再発の兆候はない. 症例2は87歳の女性で, 主訴は右上腹部痛. ERCPで下部胆管閉塞と総胆管結石を認め, 閉塞部位の組織診で好酸球主体の炎症細胞浸潤を認めた. 内視鏡的胆道拡張術, 切石術により症状は軽快した. 術後17か月再発の兆候はない. 文献上, 好酸球性胆管炎として報告されている症例は18例と少ない. 悪性疾患を念頭に高侵襲な治療が施行された報告もあるが, 近年臨床報告の増加から徐々に病態が解明されつつあり, 内視鏡的治療が主体となっていくと考えられる. 本疾患の知見と的確な診断により治療の低侵襲を維持できると考えられた.
  • 亀山 眞一郎, 伊志嶺 朝成, 蔵下 要, 長嶺 義哲, 古波倉 史子, 新里 誠一郎
    2008 年41 巻5 号 p. 540-545
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    極めてまれな副交通胆管枝 (communicating accessory bile duct) の1例を経験したので報告する. 症例は60歳の女性で, 胆石手術目的で近医より当科紹介となり, 腹腔鏡下胆. 摘出術を施行した. 手術所見・術中胆道造影および術後経静脈的胆道造影検査後CTで前下亜区域枝 (B5) と胆. 頸部との交通が確認され, 副交通胆管枝と診断した. 国内外の報告から副交通胆管枝および類似の所見を呈する症例を集計して検討したところ, さまざまな成因で発生した症例が混在しているものと推察された. また, 腹腔鏡下胆. 摘出術に際しては, 胆. 頸部周囲の慎重な剥離操作が肝要であることが再認識された.
  • 磯部 秀樹, 滝口 純, 三浦 卓也, 森谷 敏幸, 林 健一, 稲葉 行男, 渡部 修一
    2008 年41 巻5 号 p. 546-552
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性で, 脳梗塞症後の寝たきり状態で介護施設に入所中であったが, 腹痛と腹部膨満を主訴に来院した. 来院時血圧は83/33mmHg, 脈拍88回/分, 体温35.0℃であった.腹部膨満と圧痛を認めたが筋性防御はなかった. 血液生化学検査では白血球増多, CRPの上昇を認めた. 腹部X線検査で腹腔内遊離ガスを, 腹部CTでは腹水と肝両葉の門脈ガス, 小腸壁の肥厚と腸管気腫を認めた. 腸管壊死による消化管穿孔, 汎発性腹膜炎を疑い, 緊急手術を施行した. 手術所見では腸管壊死, 腸管穿孔はなく多量の腹水を認めたのみであった. 腹腔洗浄, 盲腸瘻, 空腸瘻, 胃瘻造設術を施行した. 術後は空腸瘻からの経管栄養により栄養状態も改善し介護施設へ転出となった. 本症例は, 明らかな原因は不明であるが, 便秘による腸管内圧の上昇に伴い, 粘膜損傷部から腸管気腫と門脈ガスを発症し, 漿膜のmicroperforationにより腹腔内遊離ガスが生じたと推測された.
  • 古元 克好, 水野 礼, 森 友彦, 伊東 大輔, 江下 恒統, 小切 匡史
    2008 年41 巻5 号 p. 553-557
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の女性で, 下腹部痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した. 腹部膨満と下腹部圧痛, 反跳痛を認めた. 腹部CTで便を多量に含んだ結腸の著明な拡張が下腹部正中に見られ, ダグラス窩に中等量の腹水を認めた. 上腸間膜動脈が上腸間膜静脈の右側に位置しており, 腸回転異常がベースにあるイレウスが示唆された. 全身状態が安定しており保存的加療でいったん症状が軽快したので下部消化管内視鏡検査を行うと, 上行結腸と思われる部位に捻れたような狭窄を認め, 造影で上行結腸の狭窄であると確認された. 経口摂取に伴い症状が再燃したため開腹すると, 回腸末端から上行結腸が大網の裂け目に陥入しておりこれを解除した. Nonro-tationの腸回転異常症で, これに伴う腸管の配置異常と固定不全が原因の内ヘルニアと考えられ, 腸回転異常症患者のイレウスとして典型的なものではなく, 示唆に富む症例であった.
  • 細木 久裕, 長山 聡, 川村 純一郎, 野村 明成, 伊丹 淳, 岡部 寛, 長谷川 傑, 佐藤 誠二, 渡辺 剛, 坂井 義治
    2008 年41 巻5 号 p. 558-563
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性で, 全大腸炎型の潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis; 以下, UC) を約30年間罹患していた. 2006年のサーベイランス大腸内視鏡検査にて直腸にdysplasia-associatedlesion or mass (DALM) を指摘され, 同部位より高分化型腺癌を認めたため, 1期的に腹腔鏡補助下大腸全摘術および回腸. 肛門吻合術を施行した. 切除標本の病理組織学的検査において直腸に多発性の微小カルチノイドを認めた. 文献上, UCに大腸カルチノイドを合併した報告26例のうち多くは全大腸炎型であり (88%), 平均罹患期間は13.4年で, 10症例ではさらに癌またはdysplasiaを合併していた. 長期罹患例で全大腸炎型のUCに癌やdysplasiaの発生が多いことは知られているが, UCに合併するカルチノイドの報告は少ない. 長期間の粘膜での慢性炎症を背景に微小カルチノイドが発生する可能性も示唆され, 文献的考察を加えて報告する.
  • 星川 浩一, 吉田 徹, 佐藤 耕一郎, 加藤 丈人, 小原 眞, 八島 良幸, 佐藤 孝, 若林 剛
    2008 年41 巻5 号 p. 564-569
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    アスピリン腸溶剤内服によると思われる多発大腸潰瘍とその穿孔を起こし, 緊急手術を施行したまれな症例を経験したので報告する. 症例は78歳の女性で, 心房細動, 僧帽弁閉鎖不全症に対してアスピリン腸溶剤 (100mg) 1錠/日を内服していた. 腹痛・嘔吐が出現し当院を受診. 下腹部全体に圧痛および筋性防御を認め, 腹部CTでは小腸の拡張と腹水を認め, 腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った. 開腹時黄色混濁腹水を認め, S状結腸に径3mm大の穿孔部を認めた. 術中内視鏡検査ではS状結腸から下行結腸にかけて粘膜面に多発性の深い潰瘍が認められた. 結腸左半切除と人工肛門造設を行った. 病理組織学的診断では, 筋層に達する潰瘍形成, 炎症性細胞浸潤が見られるほか, 憩室炎, 慢性炎症性腸疾患は否定的で血栓・塞栓なども認められなかった. アスピリンによる大腸潰瘍・穿孔を強く疑った. 術後は合併症なく経過し, 人工肛門閉鎖術を施行後に軽快退院した.
  • 池嶋 聡, 倉本 正文, 生田 義明, 松尾 彰宣, 田嶋 哲二, 馬場 秀夫, 島田 信也
    2008 年41 巻5 号 p. 570-574
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアの中でもまれな横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1手術例を経験した. 症例は開腹手術の既往のない74歳の透析男性患者で, 腹痛と嘔吐にて当院に紹介され入院した. イレウスの診断でイレウス管挿入ならびに精査を行った. 腹部CT, イレウス管造影検査で十二指腸水平脚腹側と横行結腸背側に嵌入した空腸に嘴状の完全狭窄を認めたため, 横行結腸間膜裂孔ヘルニアを疑い手術を施行した. 中結腸動脈右側に約3cmの横行結腸間膜後葉の欠損孔を認め, 横行結腸間膜内にTreitz靭帯から約140cmの空腸が約10cm嵌入しており, 横行結腸間膜裂孔ヘルニアによるイレウスと診断した. 整復した小腸の血行障害はほとんどなく, 後葉の欠損孔のみを縫合閉鎖した. 術後経過は良好であった. 本症はまれな疾患であるが, 開腹歴のないイレウスの原因として念頭におくべき疾患であり, 診断は困難であるものの腹部CTならびにイレウス管造影検査が重要と考えられた.
  • 祝迫 惠子, 加茂 直子, 瀬尾 智, 浮草 実
    2008 年41 巻5 号 p. 575-580
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は87歳の女性で, 腹痛, 嘔気, 嘔吐を主訴に入院. CEA 62.7ng/mlと高値を示し, CT上S状結腸に便塊, 口側腸管に著明な拡張を認めた. 大腸癌によるイレウスを疑い開腹したところ, 横行結腸に広範な壊死性変化が見られた. 結腸亜全摘を施行, 病理組織学的診断は, 壊死型虚血性腸炎で悪性所見は認められなかった. 術後6日目にCEAは3.0ng/mlと正常化したが, ARDSを発症し術後7日目に死亡した. 症例2は77歳の男性で, 敗血症性ショックで救急搬送されCEA 25.0ng/mlと高値を示したことから悪性腫瘍を疑った. 入院21日目に全身状態が安定したので下部内視鏡検査をしたが腫瘍性病変は認められず, 狭窄型虚血性腸炎であった. 保存的療法により, CEAは約半年で正常化し退院となった. その機序は不明であるが, 虚血性腸炎でもCEA高値を示すことがあることを念頭においておく必要があると考えられた.
  • 伊藤 修平, 岡村 健, 藤 也寸志, 増田 隆明, 足立 英輔, 坂口 善久, 政 幸一郎, 西山 憲一, 上杉 憲子, 川崎 真澄
    2008 年41 巻5 号 p. 581-586
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性で, 6年前にS状結腸の内視鏡的摘除SM癌の既往があり, 病理組織学的検査所見は0-Ip型, 15×14mm, tub1, pSM1, ly1, v0, cut end (-) で, 経過観察されていた. 今回, 高CEA血症, PET陽性の左骨盤内腫瘤 (径3.7cm) を指摘され当科受診となった. 病歴, 術前画像検査, 術中所見より内視鏡的摘除されたS状結腸SM癌のリンパ節転移再発と判断し, S状結腸切除およびリンパ節郭清 (D3)(pR0) を施行した. S状結腸間膜内の再発リンパ節は腸間膜表面への露出 (腹水細胞診: Class IIIb) を認め, 今後の腹膜播種再発の可能性が考えられた. 本症例は, 大腸内視鏡的摘除SM癌で, 癌遺残がなくても, 浸潤距離1,000μm以上, リンパ管侵襲陽性例では外科的追加腸切除が重要であり, 経過観察の場合は適切なサーベイランスプログラムの確立が必要であることを示す警鐘的症例である.
  • 内海 方嗣, 玉木 孝彦, 都津川 敏範, 榊原 敬
    2008 年41 巻5 号 p. 587-592
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症により駆出率が15%と低心機能状態で全身麻酔下による直腸癌手術を行った症例を経験したので周術期管理などを中心に考察を加えて報告する. 症例は59歳の男性で. 拡張型心筋症にて当院循環器科通院中に高度の貧血と便潜血陽性より下部消化管内視鏡検査を施行したところ. 直腸Raに2型直腸癌を認めた. 循環器科. 麻酔科と相談のうえ. 手術適応ありと判断し平成18年10月低位前方切除術. リンパ節郭清D2を施行した. 術中は循環動態把握のためSwan-Ganzカテーテルを留置し厳重にモニタリングしながら循環動態の管理を行った. その結果. 心不全の増悪や合併症なく. 比較的安定した周術期を経過した. 心不全をある程度コントロールし. 術前評価を入念に行い. モニター. 薬物などの準備を十分行えば. 全身麻酔下での高侵襲手術は可能であると考えた.
  • 黒崎 亮, 若井 俊文, 白井 良夫, 野村 達也, 丸山 聡, 石川 卓, 畠山 勝義
    2008 年41 巻5 号 p. 593-598
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝腫瘍に対するラジオ波焼灼療法 (以下, RFA) による横隔膜損傷に起因した合併症の報告はまれである. 症例は78歳の女性で, C型肝硬変の経過観察中に肝S8横隔膜直下に直径15mm大の肝細胞癌を指摘され, 人工胸水併用経皮経胸腔的RFAを施行した. 1年後に呼吸困難を主訴に入院したところ, 腸閉塞症状を呈し, 腹部CTにて右横隔膜ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断され緊急手術を施行した. RFA施行部対面の横隔膜に直径2cmのヘルニア門を認め, 回腸が胸腔内へ脱出し嵌頓していた. 壊死部回腸部分切除と横隔膜ヘルニア修復術を施行した.ヘルニア門は1年前にRFAにて焼灼した部位の対面に存在していたことから, RFAによる熱損傷が原因と推察された. 本症例では, 経皮経胸腔的RFAを施行し1年後に発症しており, 横隔膜ヘルニアをRFAの晩期合併症として念頭におくべきである.
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