日本消化器外科学会雑誌
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アスピリン腸溶剤内服によるものと思われた多発大腸潰瘍穿孔の1例
星川 浩一吉田 徹佐藤 耕一郎加藤 丈人小原 眞八島 良幸佐藤 孝若林 剛
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2008 年 41 巻 5 号 p. 564-569

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抄録

アスピリン腸溶剤内服によると思われる多発大腸潰瘍とその穿孔を起こし, 緊急手術を施行したまれな症例を経験したので報告する. 症例は78歳の女性で, 心房細動, 僧帽弁閉鎖不全症に対してアスピリン腸溶剤 (100mg) 1錠/日を内服していた. 腹痛・嘔吐が出現し当院を受診. 下腹部全体に圧痛および筋性防御を認め, 腹部CTでは小腸の拡張と腹水を認め, 腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った. 開腹時黄色混濁腹水を認め, S状結腸に径3mm大の穿孔部を認めた. 術中内視鏡検査ではS状結腸から下行結腸にかけて粘膜面に多発性の深い潰瘍が認められた. 結腸左半切除と人工肛門造設を行った. 病理組織学的診断では, 筋層に達する潰瘍形成, 炎症性細胞浸潤が見られるほか, 憩室炎, 慢性炎症性腸疾患は否定的で血栓・塞栓なども認められなかった. アスピリンによる大腸潰瘍・穿孔を強く疑った. 術後は合併症なく経過し, 人工肛門閉鎖術を施行後に軽快退院した.

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