内ヘルニアの中でもまれな横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1手術例を経験した. 症例は開腹手術の既往のない74歳の透析男性患者で, 腹痛と嘔吐にて当院に紹介され入院した. イレウスの診断でイレウス管挿入ならびに精査を行った. 腹部CT, イレウス管造影検査で十二指腸水平脚腹側と横行結腸背側に嵌入した空腸に嘴状の完全狭窄を認めたため, 横行結腸間膜裂孔ヘルニアを疑い手術を施行した. 中結腸動脈右側に約3cmの横行結腸間膜後葉の欠損孔を認め, 横行結腸間膜内にTreitz靭帯から約140cmの空腸が約10cm嵌入しており, 横行結腸間膜裂孔ヘルニアによるイレウスと診断した. 整復した小腸の血行障害はほとんどなく, 後葉の欠損孔のみを縫合閉鎖した. 術後経過は良好であった. 本症はまれな疾患であるが, 開腹歴のないイレウスの原因として念頭におくべき疾患であり, 診断は困難であるものの腹部CTならびにイレウス管造影検査が重要と考えられた.