症例1は87歳の女性で, 腹痛, 嘔気, 嘔吐を主訴に入院. CEA 62.7ng/mlと高値を示し, CT上S状結腸に便塊, 口側腸管に著明な拡張を認めた. 大腸癌によるイレウスを疑い開腹したところ, 横行結腸に広範な壊死性変化が見られた. 結腸亜全摘を施行, 病理組織学的診断は, 壊死型虚血性腸炎で悪性所見は認められなかった. 術後6日目にCEAは3.0ng/mlと正常化したが, ARDSを発症し術後7日目に死亡した. 症例2は77歳の男性で, 敗血症性ショックで救急搬送されCEA 25.0ng/mlと高値を示したことから悪性腫瘍を疑った. 入院21日目に全身状態が安定したので下部内視鏡検査をしたが腫瘍性病変は認められず, 狭窄型虚血性腸炎であった. 保存的療法により, CEAは約半年で正常化し退院となった. その機序は不明であるが, 虚血性腸炎でもCEA高値を示すことがあることを念頭においておく必要があると考えられた.