2008 年 41 巻 5 号 p. 581-586
症例は60歳の女性で, 6年前にS状結腸の内視鏡的摘除SM癌の既往があり, 病理組織学的検査所見は0-Ip型, 15×14mm, tub1, pSM1, ly1, v0, cut end (-) で, 経過観察されていた. 今回, 高CEA血症, PET陽性の左骨盤内腫瘤 (径3.7cm) を指摘され当科受診となった. 病歴, 術前画像検査, 術中所見より内視鏡的摘除されたS状結腸SM癌のリンパ節転移再発と判断し, S状結腸切除およびリンパ節郭清 (D3)(pR0) を施行した. S状結腸間膜内の再発リンパ節は腸間膜表面への露出 (腹水細胞診: Class IIIb) を認め, 今後の腹膜播種再発の可能性が考えられた. 本症例は, 大腸内視鏡的摘除SM癌で, 癌遺残がなくても, 浸潤距離1,000μm以上, リンパ管侵襲陽性例では外科的追加腸切除が重要であり, 経過観察の場合は適切なサーベイランスプログラムの確立が必要であることを示す警鐘的症例である.