この論文の目的は、予防行動と医療サービスの関係について、これまでの研究から明らかになっている点を整理し、今後に残された課題を明らかにすることである。主に公衆衛生学を中心とした研究では、医療サービスを代替する予防行動が明示的に考えられ、予防政策評価が実施されている。これに対して、経済学を中心とした研究では、予防行動と医療サービスを個人の選択変数と考えるため、実証的に解決されなければならない問題が残されている。予防行動と医療サービスという同じテーマを分析対象としながらも、その両者の乖離は小さいとは言いがたい。このため今後は、この乖離を埋めてゆく更なる研究が必要であると考えられる。