本稿では、社会的入院の量的把握および費用推計を行うとともに、介護サービス価格を把握し、医療サービス価格との比較を通じて、削減可能な社会的入院の費用額を推計した。本稿の最大の特長は、6ヶ月以上の長期入院患者の在院日数すべてを社会的入院として計算するのではなく、入院当初の6ヶ月分については社会的入院から除いたことにある。
本稿の分析によれば、社会的入院の量的重要性は、これまで考えられていた水準よりも遥かに低く、社会的入院の解消による費用削減効果は期待されるほど大きなものではない。もちろん、この結論により社会的入院が肯定されるわけではない。医療サービスを必要としない入院は、他の適切なサービスに振り替えられるべきであろう。しかしながら、医療財政悪化の責任を社会的入院に帰することにより、真の要因が隠されてしまうのであれば、将来に禍根を残すことになろう。