2008 年 20 巻 1 号 p. 15-33
医療情報システム(特にオーダリングシステム)の導入が入院医療の生産性及び効率性に与える影響を明らかにするため、自治体病院のパネルデータを解析した。ー床当たり年間退院患者数(年間病床通過患者数)をアウトプット指標とした生産関数に対して、三種の確率フロンティア分析(固定効果モデル、真固定効果モデル、効率性効果モデル)を適用し、病院生産性及び技術的効率性に対するオーダリングシステム導入の影響を比較評価した。
結果、固定効果モデルでは療養病床を持たない病院においてマージナルな生産関数の上方シフトが示された。また、真固定効果モデルにおいて、前年度オーダリングシステム導入が生産関数の上方シフトに有意に関連することが示された。さらに、効率性効果モデルにおいても、前年度オーダリングシステム導入は技術的効率性と有意な正の関連を持つことが示された。これらの傾向は病院の移転・新改築等の施設更新の影響を除いてもみられた。なお、推定された技術的効率性値は各モデルにおいて大きく異なり、他モデルに比較して、真固定効果モデルでは平均値が高く、標準偏差が低い結果となった。なお、各モデル間における技術的効率性値の順序相関係数は固定効果モデルと効率性効果モデル間で0.7-0.8程度を示したが、真固定効果モデルと他モデル間との相間は0.4未満であった。
この結果より、オーダリングシステムは一定期間における退院患者数を指標とした生産関数の上方シフトもしくは技術的効率性の改善に寄与する可能性が示唆された。