医療経済研究
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Print ISSN : 1340-895X
特別寄稿
所得格差と健康:日本における実証研究の展望と課題
小塩 隆士
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 21 巻 2 号 p. 87-97

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抄録

所得格差が健康あるいは健康意識にどのような影響を及ぼしているかが、社会疫学の分野で重要な研究テーマとなっている。とりわけ近年においては、個人属性や地域属性など多重なレベルの要因を同時に考慮して、格差と健康・健康意識の関係を分析する実証研究が精力的に進められている。
日本ではデータ面の制約もあって、所得格差と健康・健康意識の関係に関する多重レベルの実証分析を進めることは容易ではなかった。しかし、データ面の制約はまったく克服できないというわけではなく、実際、最近では国際的に比較可能な形での研究が徐々に蓄積され始めている。
本稿では、日本における実証研究を簡単に展望するとともに、データや分析面で解決すべき課題、今後の研究課題について、筆者自らの暫定的な研究成果も踏まえながら整理する。所得格差と健康・健康意識との関係は、経済学や社会学にとっても関心の高いテーマである。今後は、より一般的なwell-being研究も視野に入れた、学際的・総合的な研究の進展が期待される。

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© 2009 本論文著者

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