医療経済研究
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研究資料
抗がん剤ジェネリック医薬品の適正使用への問題点と問題解決への新たな視点
~医療関係者が呈する問題点への企業側の対応について~
今井 康人飯島 肇蓮沼 智子山田 好則渡邉 誠武藤 正樹鈴木 順子伊藤 智夫
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 22 巻 1 号 p. 109-121

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抄録

【目的】近年、厚労省主導で後発医薬品(以下「ジェネリック医薬品」)の利用促進策が進められている。しかし、特に「抗がん剤」へ焦点をあてた場合、抗がん剤特有の問題が存在するため、その普及についてはクリアすべき諸問題が多々あることが想像できる。このような状況を踏まえ、特にジェネリック医薬品製造販売企業の立場から見た抗がん剤ジェネリック医薬品に対する現況での認識や問題点、更にその必要性等についてアンケートにて調査し、中心となる問題の洗い出し、分析を行った。加えて医療関係者へのアンケート調査も併せて行うことで使用する立場から見た問題点も抽出し、検証を行うこととした。
【方法】日本ジェネリック医薬品学会に所属するジェネリック医薬品製造販売会社を対象として、2008年10月~2008年12月の期間にてアンケート調査を実施した。また、医師(病院勤務医師および開業医師)、薬剤師(病院薬剤師、薬局薬剤師)および薬学生(大学院博士課程履修学生)に対して2008年8月~2008年12月の期間においてアンケート調査を行った(回答選択式(複数回答可)及び自由回答併用)。
【結果】ジェネリック医薬品製造販売会社28社を対象にアンケート調査を行ったところ18社より回答を得た。(回答率64.3%)。また医療関係者へのアンケート調査において、医師49名、薬剤師29名、薬学生54名より回答を得ることができた。抗がん剤ジェネリック医薬品に対していずれの企業も「魅力的な医薬品」と回答しているが、現状において製造販売することについて様々な問題点を抱えているため開発することに躊躇する傾向が見られた。一方、医療関係者では抗がん剤ジェネリック医薬品の必要性について認識しているが、現状での使用状況で普及していくことには否定的な見解が多数を占めた。
【考察】抗がん剤ジェネリック医薬品は極めて細胞毒性の高い医薬品のジェネリック医薬品であるため他の医薬品と同次元で取り扱うのは不合理であり、問題点が数多く存在することは紛れもない事実である。しかし、医療行政の動向からジェネリック医薬品への切り替えが進むのはほぼ必然でもあり、今後は医療関係者に抗がん剤ジェネリック医薬品への不安を抱かないだけの十分なエビデンスの提供を臨床、企業および大学の3極が連携をとりながら検討していく必要がある。

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© 2010 本論文著者

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