平成20年4月より実施されている特定保健指導の下で、食事、運動、禁煙の観点からの指導が十分な効果を示さなかった時に医薬品を使用することも考慮すべきではないか、さらにそのような医薬品がOTC薬(一般用医薬品)として提供されれば、医療費を削減する上で一層の効果があるのではないかと考え、特定健康診査において特に脂質異常に対する何らかの対策の必要性を指導された者が、OTC薬化された脂質異常症治療薬(以下、一般用脂質異常症予防薬(プラバスタチン10mg相当の薬剤を想定))を使用したセルフメディケーションによって自らの血清コレステロール濃度をコントロールすることが、医療費の削減にどの程度寄与することができるのか分析した。その結果、一般用医薬品を使用したプログラムは使用しないプログラムに比べ対象者を40歳とした場合、獲得生存年が0.17年延長し、費用は、43万6000円減少するドミナントとなった。また、国民全体での医療費削減額は、今後10年間で1,377億円、20年間で6,056憶円と推計された。この一般用医薬品の導入による医療費削減効果は、医療費の負担の一部を一般用医薬品を利用することによるセルフメディケーションに転換したためとも考えられ、一方で患者負担の増加をもたらす可能性がある。そこで患者負担の軽減を図るために一般用医薬品の費用の一部を保険者が負担するとの仮定をおいた保険者の立場での分析を追加した。その結果、医療費の削減が相殺される保険者の負担額は、35,432円であった。ちなみに、この年間の負担は、一般用医薬品の価格をメバロチンの薬価(2008年改訂)と同額とした場合、患者負担の約79%を負担できることを意味している。
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