医療経済研究
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研究論文
高齢者医療における社会的入院の規模
―福井県国保レセプトデータによる医療費からの推計
鈴木 亘岩本 康志湯田 道生両角 良子
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 24 巻 2 号 p. 108-127

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抄録

本稿は、介護保険開始後も依然として解消していない社会的入院について、福井県全県の国民健康保険レセプトデータを用いてその規模の推計を行った。具体的には、福井県内の各市町の国民健康保険に加入する70歳以上の高齢者(無受診者を除く、通年資格者)について、2007年度1年間のデータを分析した。

一般に用いられる社会的入院の定義は入院期間の長さによるものであるが、これは医学上の理由のある長期入院との区別ができないため、定性的に問題がある。そこで、府川(1995)にしたがって、長期入院者の1日当たり医療費から「基本料」を算出し、誤差を考慮して、その1.1倍を下回るものを社会的入院者と判定した。

基本料の定義によって4つのケースを算出しているが、「入院者計に占める社会的入院者の割合」は7.5%~18.4%、「資格者に占める社会的入院者の割合」は1.9%~4.6%、「入院医療費に占める社会的入院者の入院医療費の割合」は6.9%~23.5%、「医療費計に占める社会的入院者の入院医療費の割合」は3.2%~10.9%と、現在も決して少なくない規模の社会的入院が存在していることが明らかとなった。もっともこれらの割合は、府川(1995)が福井県について計算した1993年度の割合よりも、約半分~2/3ほど低いものになっており、介護保険の導入などが社会的入院の減少に寄与した可能性がある。

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