国民医療費が伸び続けるなか、調剤医療費における薬剤料の伸びも顕著である。本研究では構造方程式モデリング(SEM)の一つであるパス解析を用いて、現在の医薬分業制度が、院外処方における薬剤料に与える影響を、ナショナルデータを用いて構造的、定量的に分析した。
院外処方における、処方箋1 枚あたり1 種類あたり1 日内服薬剤料(以下、薬剤料)に与える影響を、一人当た り県民所得及び、人口千人あたりの生活保護被保護者数、65 歳以上高齢化割合を変数に加え、医薬分業率の進捗とともに薬剤料に与える効果を、総合効果、間接効果、直接効果として比較した。
その結果、一人当たり県民所得が年間10 万円高くなると薬剤料は0.377 円上昇(総合効果)し、医薬分業率が 1%ポイント高くなると、薬剤料は0.228 円減少した(総合効果)。また、人口千人あたりの生活保護被保護者数が 1名増えると、薬剤料は0.093 円上昇し(間接効果)、65 歳以上高齢化割合が1%ポイント上昇すると、薬剤料は 0.135 円上昇する(間接効果)ことが確認された。
このことは、本モデル内においては、現在の医薬分業制度とその進捗が、社会経済的要因の変化により上昇する医療費、特に処方箋1枚あたり1種類あたり1 日内服薬剤料を抑制している可能性があることを示した。
本研究では、適切な医薬分業制度を発展、維持することで調剤医療費における薬剤料の上昇を抑制できる可能性を仮説モデルという形で示唆した。