医療経済研究
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論文
家計の消費支出からみた歯科医療費の長期的な動向の分析
尾崎 哲則野村 眞弓市川 裕美子吉田 茂
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ジャーナル オープンアクセス

2000 年 8 巻 p. 5-23

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抄録

1978年以降の家計調査、国民医療費、患者調査をもとに、家計の医療支出と歯科診療所の患者数から歯科診療費の動向を経年的に分析し、その特性について検討を加えた。

家計の歯科診療支出はGDE(国内総支出)の上昇とともに増加していたが、増加率は1988年以降GDEの成長率を下回り、消費支出に占める割合も1987年までの期間、上昇した後は一定の水準で推移していた。また、世帯主の年齢と所得との関係では、壮年期の支出額が多く、所得階層による支出の差が大きかった。

歯科診療所の患者数は老人保健法の給付対象の患者数と70歳以上の患者数の増加率がほぼ等しく、自費診療患者数及び保険外診療収入は1990年代を通じて減少を続けていた。

以上のことから、歯科診療費は消費支出の一定割合を占めるが、家計の所得による支出の格差が大きく、消費支出の動向や医療保険制度の変更の影響を一般医療費に比べて受けやすいことが示唆された。また、歯科医療に占める自費診療の割合は患者数・支払額とも、老人保健法制定を契機に、高齢患者の増加に比して逓減していることが示された。

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