2000 年 8 巻 p. 25-49
現在、日本においては同等の医薬品グループに対して同一保険償還価格を設定する制度の導入が議論されている。この研究は、適正なグルーピングが行われるという前提を置いた上で、その「同等医薬品・同一保険償還価格」制度の研究開発への影響を、研究開発インセンティブへの影響と研究開発原資である企業収益への影響という2つの観点から分析する。同等とみなされる複数の新薬の加重平均価格に同一保険償還価格が設定される場合、研究開発型企業の収益に悪影響を与えるとは限らないが、革新性の低い新薬の研究開発インセンティブを革新性の高い新薬のそれより相対的に高める可能性が指摘される。一方、同等の複数の新薬に対し、より低い同一保険償還価格を設定することは、革新性の高い新薬の研究開発インセンティブを相対的に高めるが、企業収益にはマイナスの影響を与える。また、同一成分に同一保険償還価格を設定することは、研究開発型の企業収益にマイナスの影響を与える可能性があるが、革新性の高い新薬と低い新薬の相対的な研究開発インセンティブへの影響は特定できない。最後に、「同等医薬品・同一保険償還価格」制度のあり方について議論する。